第40章 彼が最も愛しているのは自分自身だ

二日後。白川凰姫が宅配を取りに階下へ降り、廊下の曲がり角まで来たところで、ふいに人影に塞がれた。

相良沢弥だった。

今日は薔薇は持っていない。ベージュのトレンチコートに、きっちり整えられた髪。表情は、心配と胸の痛みをほどよく混ぜた「ちょうどいい顔」だ。

「凰姫、どうして会ってくれない」

一歩詰め、手を掴もうとする。

白川凰姫は半歩引いて、それをするりとかわした。陌生人を見るような、冷えた目。

「相良さん。私たち、もう会う必要ないでしょう」

「まだ怒ってるんだろ?」

相良沢弥は傷ついたふうに眉を寄せる。

「あの頃のことは……俺が悪かった。踏ん張れなかった。でも、俺にもどうにも...

ログインして続きを読む