第52章 優しいだから、手は出さない

言い終えるなり、彼は「パチン」と電話を切った。

白川逸也の口ぶりは、相変わらず当然のようで、脅しまで抜かりない。

白川凰姫は最初、無視するつもりだった。もう白川家とは、二度と関わりたくない。

けれど、その言葉が釣り針みたいに思考に引っかかる。

大学時代のすべてを注いだ、あの設計画。未来への構想も情熱も、あそこに詰まっている。

白川家の連中にとっては屑同然でも、凰姫にとっては何より大切な宝物だった。

白川逸也は本当に「親切」で保管してやったのか。

それとも、口実にして彼女を辱めたいだけなのか。

凰姫はスマホを握りしめる。指の関節が白くなるほどに。

――知っている。白川逸也とい...

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