第61章 妻と一緒に行く

そのひと言が落ちた瞬間、場の空気がぴたりと凍りついた。

新谷知代の顔に貼りついていた完璧な笑みが、ほんの一瞬だけ強張る。けれど彼女はすぐに立て直し、やわらかな声で言った。

「お祖母さま、お忘れになったんですか。私、知代です」

「おお――」

お祖母さまはわざとらしく声を引き、いま思い出したとでも言いたげに頷いた。

「新谷んとこのお嬢ちゃんかい。いやだねぇ、年を取ると物忘れがひどくて。でもあんた、ずいぶん耳が早いんだねぇ。こっちは山を下りたばっかりだってのに、あんたはそのあとを追うように来るんだから。知らない人が見たら、うちに監視でもつけてるのかと思うよ」

まるで遠慮がなかった。

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