第62章 口紅がにじんだ

お婆さまはこくりと頷くと、傍らの周防さんに言いつけた。

「知代は体が弱いんでしょう。私の滋養品を持たせてあげて。体調が悪いなら家で大人しく静養するべきよ。用もないのに外をうろつかないこと」

――それに、いつまで芳丸巡哉の周りをちょろちょろしているの。距離感というものがない。

新谷知代は口元を引きつらせ、そそくさと場を離れた。松本清芽がわざわざ玄関まで見送っていく。

その日の校友会に合わせて、伊藤凉一は朝早くから助手を二人連れ、いくつもの大箱を提げて芳丸家へやって来た。

伊藤凉はお婆さまと同じくらいの年頃だ。銀髪をきっちり撫でつけ、改良した和装に身を包む。背筋はしゃんと伸び、目つきは...

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