第65章 俺たちの子どものために用意したもの

今、肩に掛けられているそのスーツの上着が、皮肉としか思えなくなった。さっき講堂で、彼の告白に胸の奥がふわりと温まったばかりだったのに――その熱は、一瞬で冷水を浴びせられたように消えてしまう。

表向きの愛情は、人に見せるためのもの。

けれど密やかな優しさやロマンは、別の誰かのためにある。

白川凰姫は胸のあたりがきゅうっと締めつけられるのを感じた。目を閉じ、そのまま頭を窓ガラスにもたせかける。もう何も言いたくなかった。

坂東補佐はますます気が気でなくなった。何とか口を開こうとした、そのとき。

がちゃり、とドアが開く。

外気の冷たさをまとった芳丸巡哉が乗り込んできて、説明の機会は消えた...

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