第114章 男を見つけてあなたを怒らせる

小野寺彩音の手が宙で止まった。

ふと顔を上げると、ちょうど男の視線とぶつかる。その切れ長の目にはどこかからかいの色が浮かんでいた。男の顔は憔悴し、唇は血の気を失っている。だが、病を患っているその姿は彼の顔立ちを損なうどころか、かえって人の心を締め付けた。

小野寺彩音は深呼吸を一つすると、彼の言葉が聞こえなかったかのように、男のズボンの裾を捲り上げようとした。しかし、その手は押さえつけられた。

「医者を呼んでくれ」古賀硯司が言った。

小野寺彩音はもっともだと思い、向き直ってナースコールを押した。

ほどなくして、医療スタッフの一団がぞろぞろと入ってくる。

古賀硯司はまた言った。「周藤啓...

ログインして続きを読む