第167章 俺は俺の妻を待つ

女性が立ち去ると、小野寺彩音は訝しげに階段を下りていった。

「さっきの女の子、知り合い?」小野寺彩音は好奇心から古賀硯司に尋ねた。

「いや、知らない」

古賀硯司はごく自然に彼女のショルダーバッグを受け取る。手に持つとずっしりとした重みがあった。彼は何気なく中を開けて覗き込むと、一台のipadと、プリントアウトされた資料の束、そして分厚い『刑法』の本が入っていた。

「じゃあ、さっき彼女は……?」小野寺彩音はますます不思議に思った。

「誰を待っているのかと聞かれた」

「?」

「俺の嫁を待っている、と答えた」

小野寺彩音は途端に耳の付け根までほんのり赤くなり、思わず拗ねたように古賀硯...

ログインして続きを読む