第25章 奥さん、私をブロックしましたか?

空気が二秒ほど固まり、古賀硯司は無表情のまま自分の席へと戻った。

小野寺彩音はウェイターを呼びつける。「代理入札者と依頼主に連絡をお願いできますか。このエメラルドは母の形見です。私に譲っていただけないか、この借りは必ず返すと伝えてください」

ウェイターは頷いて交渉に向かった。

一分も経たないうちに、代理入札者は値を上げなくなった。

競売人がハンマーを打ち鳴らす。「古賀様、おめでとうございます!」

古賀硯司の口座から落札代金が支払われ、ほどなくして、エメラルドの翡翠の数珠がウェイターの手で小野寺彩音のもとへ届けられた。

小野寺彩音はことさら大切そうに翡翠の数珠を撫でたが、受け取ろうと...

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