第307章 人を奪うつもりか、それとも追うつもりか?

車内は数秒間、静寂に包まれた。

ただ、互いの呼吸だけが熱を帯びている。

古賀硯司は怒りからか、それとも煽られたからか、ふっと笑みを漏らした。だが、その目に笑いの色はない。

「小野寺知世、わざとだな? ん?」

最後の一文字は語尾が上がり、どこか脅すような響きを帯びていた。

小野寺彩音は狡猾な小狐のように笑い、両腕を彼の首に回すと、自ら顔を寄せてその唇に軽くキスをした。

「ご褒美じゃない。女性の方から、車内で、ゴムなし……あなたたち男って、そういうのが好きでしょ?」

古賀硯司は歯ぎしりして言った。

「誰に教わった? 『たち』って誰だ? 俺以外に、お前にはどんな男がいる? 俺はそんなこと...

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