第318章 どうした、キスさせてくれないのか?

神崎暁はほっと息をついた。どうやら高橋樹は怒ってはいるものの、まだ話はしてくれるらしい。

立秋の初日は晴れ渡らず、空はどんよりと曇り、まるで彼の顔色のようだった。

会場の外に一台のカリナンが停まっている。高橋樹が助手席のドアを開け、神崎暁に乗るよう目配せした。

神崎暁は何も言わず、おとなしく車に乗り込んだ。

ドアが「バンッ」という音を立てて閉められる。その動作の主の機嫌の悪さを物語るには十分だった。

神崎暁は、彼が車の前を回り込んで運転席に向かうのを見ながら、高橋樹が自分に利用されたことに怒っているのか、それとも別の理由なのかを考えた。彼は、自分が利用したと知っているのだろうか?

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