第323章 結婚はしない、別れもしない

喫茶店。

五十路も近いであろうその貴婦人は、恐ろしいほどに手入れが行き届いており、見た目は四十そこそこ。左手の指にはまった、鳩の卵ほどに巨大な鶏血石の指輪が、嫌でも視線を引き寄せた。

彼女は悪びれもせず、神崎暁を頭のてっぺんから爪先まで値踏みするように眺め、こう評した。

「予想していたよりは、人前に出しても恥ずかしくない器量のようね」

神崎暁はごくありふれた服装で現れ、席に着くと礼儀正しく挨拶を済ませ、静かに高橋の母を見据えた。リラックスした姿勢に、微塵も緊張を感じさせない表情。そのあまりに堂々とした振る舞いに、高橋の母は少なからず驚きを覚えたようだ。

——高橋樹との結婚を夢見るご令...

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