第345章 高橋樹、綺麗に別れよう、いい?

神崎暁はここ数日、妙に寝付きが悪かった。まどろみの中で、誰かがドアの錠を開ける音を拾う。

続いてリビングの明かりがつく微かな音、そして、男の足音が響く。

足音は忍ばせるように軽かったが、彼女には分かった。

高橋樹だ。

次の瞬間、足音は唐突に止まり、それきり聞こえなくなる。

眠気は徐々に引いていった。神崎暁はベッドを出て手早く外出着に着替えると、寝室を出る。そこには、リビングの中央に立ち尽くし、部屋の隅に置かれた二つの大きなスーツケースを見つめる高橋樹の姿があった。

目の下には青黒い隈が浮かび、顔色は微かに疲労を滲ませている。眉を寄せたその表情からは、隠しきれない冷ややかな気配が漂っ...

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