第36章 あなたの夫はあなたを気遣う

夜明けの最初の光が、古賀本邸に差し込んだ。

小野寺彩音は、古賀大奥様の傍に仕える古参の使用人に起こされた。「三の若奥様、お目覚めの時間でございます。お客様方がお見えになり始めました」

「お客様」という言葉を聞いた途端、小野寺彩音の眠気は一気に吹き飛んだ。

身じろぎすると、全身に気怠い痛みを感じる。腕、太もも、鎖骨、腰には、昨夜の痕跡である赤いキスマークがはっきりと残っており、雪のように白い肌の上でひどく目を引いた。

使用人は四十がらみの女性で、昨夜何があったのかは一目瞭然だった。その様子に思わず揶揄するような笑みが浮かびかけたが、相手が古賀硯司の妻であることを思い出し、無理やり堪えた。...

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