第39章 古賀硯司、私は苦しい

古賀錦枝は、これほどまでの硯司兄さんを一度も見たことがなかった。

その顔は深く沈み、恐ろしい形相で、全身から纏う気配は張り詰め、まるで一触即発の状態だった。彼は小野寺彩音を固く見つめ、瞬き一つで彼女が消えてしまうのではないかと恐れているかのようだ。

小野寺彩音の頬から首にかけては異常なほど赤く染まっている。古賀硯司が彼女の袖を捲り上げると、腕には赤い発疹ができていた。

「車を回せ! 医者を呼べ!」古賀硯司は小野寺彩音を横抱きにした。

「まさか病気を隠して古賀家に嫁いでくるなんて、信じられない! うちが婚約を解消して本当によかったわ……」古賀家の三男の奥様が呟き終わらないうちに、古賀硯司...

ログインして続きを読む