第63章 古賀硯司、むちゃくちゃしないで、見苦しい

「おい!」

小野寺彩音は、彼が自分の肩に回した手を不自然に振り払い、訝しげな視線を向けた。

もうすぐ元旦那になるのに、少しは境界線を弁えたらどうなの?

古賀硯司は、小野寺彩音の表情に込められた訴えを理解していないかのようだった。

小野寺彩音は少し厄介だと感じた。なぜか、まるで綿に拳を打ち込んでいるような手応えのなさだった。

「あの資産譲渡の手続きは始まったの?」小野寺彩音は立ち止まり、古賀硯司に尋ねた。「館林先生はあなたの個人弁護士として有能なはずよ。もう二週間近く経つのに、何の音沙汰もないなんてことないでしょう?」

古賀硯司は俯き、瞳の奥に一瞬よぎった暗い光を隠した。

「もうす...

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