第83章 古賀硯司は心の痛みを必死に堪える

廊下は一瞬にして静まり返った。

小野寺俊明は小心者で、場の空気が険悪になったのを察すると、そっと半歩横にずれた。

「中を見てくる」古賀硯司が病室のドアノブに手をかけた、ちょうどその時。力を込める間もなく、部屋のドアが内側から開けられた。

中から出てきたのは、江沢冬弥だった。

古賀硯司はごく短い間、呆然とした。江沢冬弥がこれほど早く小野寺彩音の入院を知ったことには、さほど驚かなかった——江沢家の力をもってすれば、小野寺彩音の周りに監視の目を増やすことなど造作もないことだ。

「古賀様はずいぶんとお早いお着きで」江沢冬弥は背後でドアを閉めた。

「江沢様こそ、お早いことで」古賀硯司は言い返...

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