第31章

「都から出るのか?なんだか急だな」と北村陸が尋ねた。

佐藤暖子は笑いながら答えた。「実は突然でもないのよ。今回の都への訪問はちょっとした用事を済ませるためだけだったから。用事が終われば帰るつもりだったの」

「本当に行くのか?」

ずっと黙っていた藤原宴が突然口を開いた。

「そうよ」

藤原宴が何か言おうとした瞬間、佐藤暖子が先に口を挟んだ。

「何を言いたいか分かるわ。安心して、あなたに借りたお金のことはちゃんと覚えてるから。お金を稼いだら返すわ」

藤原宴は言葉に詰まり、ただ冷たく一笑した。

その冷笑に佐藤暖子は不快感を覚えた。

この男、自分を見下しているのか?

自分がこの借金...

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