第210章 風呂場の激情

岡本源はしばらくの間、苛立ち紛れにドアを叩き続けていたが、室内からは物音ひとつ返ってこなかった。

「クソッ、あの野郎……。三分も持たずに果てちまえ」

岡本源は、男にとって最も屈辱的とも言える呪詛を吐き捨てると、舌打ちをして車椅子を操り、青木絵里香の寝室へと引き返していった。

その頃、バスタオルを一枚羽織って浴室から戻った青木絵里香は、着替えようとした矢先、ふとテーブルに置かれた赤ワインに目を留めた。

「気が利くこと。まさかワインが用意されているなんてね」

彼女はグラスを手に取り、立ち上る芳醇な香りにうっとりと目を細める。

「いい香り……。こんなに美味しそうなワイン、初めてだわ」

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