第316章 北村昇太の奥の手

北村菜々美と北村昇太は会話に夢中で、ベッドの隅の下で微かに赤い光を点滅させている小さな物体に気づいていなかった。それは――盗聴器だ。

病室の監視を任されているボディガードは、すぐさまその内容を佐藤健志と北村萌花に報告した。

北村萌花は佐藤健志の傍らでリンゴの皮を剥いていた。すらりとした長い指でペティナイフを握り、するすると滑らかに皮を削ぎ落としていく。

萌花の口元に、ふっと笑みが浮かんだ。

「お父さんが大金を隠し持っていたなんてね。私もまだまだ、あの人のことを分かってなかったみたい」

最後まできれいに皮を剥き終えると、萌花はナイフで小さく一口大に切り分け、健志の口元へと運んだ。

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