第53章 まるで若い夫婦のよう

北村萌花は部屋の戸を閉め、外の人物を見たくなかった。

佐藤健志はちらりとそちらに目をやり、「追い払ってこようか」

「いいえ、放っておけばいなくなるわ」北村萌花はあれだけはっきり言ったのだ。少しでも頭が回るなら、とっとと立ち去るべきだろう。

佐藤健志は彼女に水を一杯注いだ。「水を飲んで。くだらない人間のために腹を立てるな」

北村萌花は彼の全く変わらない様子を見て、恐らく彼はまだ自分をナナだと思っているのだろうと感じた。

「ありがとう。家の調味料が切れたから、町まで買いに行ってくるわ」

佐藤健志は頷いた。「運転、気をつけて」

北村萌花は思わず苦笑した。二人のこのやり取りは...

ログインして続きを読む