第10章

タイムトラベル装置の光が消え、晴也は再び2080年と戻っていた。

だが今回、すべてが違っていた。

自分の体が透明になり始め、指先が徐々に消えていくのを感じる。

歴史は、変わったのだ。

晴也は笑った。計画が成功した証だ。

彼は窓辺へ歩み寄り、この世界を最後にもう一度だけ見ようとした。

机の上にあった母の古い画板が消えている。

未完成だった原稿も、ない。

新しい時間軸では、母が創作を諦めさせられることなど、決してなかったからだ。

晴也が窓を開けると、眼下に広がる秋葉原の街並みに、彼は驚きのあまり言葉を失った。

巨大な広告看板に掲げられているのは、すべて夏美の...

ログインして続きを読む