第2章

一人、長いテーブルの前に座る。目の前には、ほとんど手つかずの朝食が並んでいた。

こうして一人で食事をするのは、もう三週間も続いている。

あの誕生日パーティー以来、藤原翔太郎と私の関係は氷点下まで冷え切っていた。

彼は時間通りに帰宅しなくなり、顔を合わせる回数は憐れなほどに少ない。

家にいたとしても、いつも書斎に閉じこもり、いわゆる『緊急の仕事』とやらを片付けている。

「翔太郎は、今日も朝食には戻らないのかしら?」

食器を片付けている執事に尋ねた。

「旦那様は早朝五時にはお出かけになりました。朝の会議があるとのことです」

執事は恭しく答える。

また言い訳。

よほど彼の『高嶺の花』に夢中らしい。

私はそっとコーヒーカップを置き、指先でカップの縁をなぞった。

「いつ帰るか、何か言っていた?」

「旦那様は、夜は会食があるかもしれないので、お待ちなさらなくて結構だとおっしゃっていました」

私はかすかに頷き、まるでそれが当たり前のことであるかのように、顔に笑みを浮かべた。

「わかったわ」

執事が去った後、スマートフォンを手に取ると、井上美香からのメッセージが届いていた。

【藤原翔太郎、昨夜も病院で遅くまで付き添ってたわ。泉弘道の心臓検査の結果が出たんだけど、思ったより複雑みたい】

スマートフォンを置き、手入れの行き届いた庭を窓の外に眺める。

彼がこのところどこへ行っていたのか、もちろん私は知っている。

病院のVIP病室。そこには、彼の息子だと名乗る少年が横たわり、そして私の夫であり、藤原グループの舵取り役である彼が、片時も離れずベッドの傍らに付き添っているのだ。


夕刻、私は車を明月山へと走らせた。ここには東京で最高の懐石料理があり、重要な顧客との夕食会を予約していた。

実際には、泉弘道の『帰国歓迎会』がこの料亭で開かれると、井上美香が教えてくれたのだ。私たちの結婚記念パーティーよりも、ずっと豪勢な席だという。

私は窓際の席を選んだ。彼らがいる個室の入り口がちょうど見える場所だ。十分も経たないうちに、彼らが到着するのが見えた。藤原翔太郎は濃紺のスーツを身にまとい、泉弘道の手を引いている。

泉弘道は顔色こそ蒼白だったが、その瞳は興奮の光で輝いていた。

泉清子がその後ろに続く。彼女は今日、髪型を変えていて、パーティーで見た時よりも幾分か若く見えた。

半ば開いた個室の扉越しに、藤原翔太郎が泉弘道を抱き上げ、椅子の上に立たせてバースデーケーキの蝋燭を吹き消させているのが見えた。泉弘道は興奮して手を叩き、泉清子はその傍らで、優しくその光景を見守っている。彼ら三人は、まるで本当の家族のようだった。

私は静かに隅の席に座り、まるで他人の幸せを密かに覗き見している部外者のような気分になった。

昔もそうだった。そして今、私は藤原翔太郎の法的な妻でありながら、やはり幸福の外側に立つ部外者のままなのだ。

席を立とうとした、その時。レストランの外がにわかに騒がしくなった。数人の経済記者がどこからか情報を嗅ぎつけ、殺到してきたのだ。

彼らは藤原翔太郎と泉清子に気づき、マグネシウムの光が絶え間なく瞬く。

「藤原さん、こちらのお子さんはどなたですか?」

「泉さん、藤原さんとはどういったご関係で?」

「お子さんは、お二人の?」

周りのテーブルにいた財界人たちがひそひそと囁き始め、ある者はスマートフォンで写真を撮り、またある者は藤原グループ上層部のスキャンダルの可能性を小声で議論している。

藤原翔太郎は泉弘道を庇い、記者のレンズを遮ろうと試みる。子供の正体を問われた時、彼の視線は明らかに揺らぎ、そして答えた。

「プライベートな場です。我々のプライバシーを尊重してください」

私は人垣の端に立ち、その光景を見ていた。

その時だった。一人の記者が私に気づいた。

「本条千夏さん! 本条財閥の当主! あなたはこの件をご存知で? このお子さんとご主人はどういうご関係なんですか?」

全員の視線が一瞬にして私へと向かう。記者たちは血の匂いを嗅ぎつけた鮫のように、すぐさま私を取り囲んだ。

私は揉みくちゃにされ、オーダーメイドのスーツは埃にまみれ、混乱の中で膝を擦りむいてしまった。

顔を上げると、藤原翔太郎がこちらへ歩いてこようとしているのが見えた。

だがその瞬間、泉清子が彼を引き留め、泉弘道も彼のスーツの裾を掴み、泣き声混じりに叫んだ。

「パパ、行かないで!」

藤原翔太郎はその場に立ち尽くし、視線が私と彼らの間をさまよう。

最終的に、彼は選択した——泉清子母子の傍に残り、ボディガードに彼らを護送させて立ち去らせることを。そして私は、記者たちの包囲網の中に取り残された。

幸いにも、同じレストランにいた数人の女性が、記者たちの猛攻から私を助け出してくれた。

彼女たちは私を化粧室まで支えてくれ、一人の女性が膝の傷を拭くためのティッシュを渡してくれた。

「少し出血が普通じゃないような……」

一人が心配そうに言う。

その時、下腹部から激痛が走り、私は洗面台に手をつかなければ立っていられなくなった。視線を落とすと、すでに血が脚を伝って流れ落ちていた。

そこでようやく思い出した。三日前の健康診断の報告書を。

私は、妊娠していた。

今夜、藤原翔太郎にこのことを伝えるつもりだった。

どうやら、もうその必要はなくなったようだ。


病院のVIP病室で目覚めた時、母と藤原翔太郎が窓辺で小声で話し合っていた。

「……株価はすでに5パーセント下落。メディアは皆、泉弘道の正体を憶測しているわ。我々も座視はしない。明確な態度を示してもらうのが最善よ」

母が冷静に言う。

「この件は私が処理します。ご安心ください」

藤原翔太郎の声は、なおも落ち着きを保っていた。

「千夏が妊娠していたことは知りませんでした。私の不徳の致すところです」

私が目を開けると、二人はすぐさまこちらを向いた。藤原翔太郎がベッドの傍らに歩み寄り、気遣わしげに尋ねる。

「気分はどうだ?」

「子供は、まだいるの?」

私は単刀直入に尋ねた。

「無事だ」

藤原翔太郎は答える。

「医者によると安静が必要だそうだ」

私は苦笑した。

「ご心配ありがとう。でも、あなたがもっと心配すべきは泉弘道のことでしょう。だって、彼こそがあなたの息子なのだから。違う?」

藤原翔太郎はため息をついた。

「千夏、説明させてくれ。泉弘道は先天性の心臓病を患っていて、日本で最先端の医療技術が必要なんだ。彼の父親として、最高の治療を受けさせる責任がある」

私は冷静に彼を見つめた。

「では、彼があなたの息子だと認めるのね?」

「ああ」

彼は頷いた。

「泉清子母子は湘南の別荘に住まわせる。君の普段の生活に影響はないようにする」

彼は一拍置いて続けた。

「藤原グループの実質的な支配者の一人として、君には会社レベルで泉弘道の医療資金を問題視しないでほしい。結局のところ、彼は罪のない子供なんだ」

私は天井を見つめ、不意に尋ねた。

「私たちが初めて会ったのがどこだったか、覚えている?」

藤原翔太郎はその話の転換に意表を突かれたようだったが、それでも答えた。

「四年前、ハーバード・ビジネススクールの同窓会募金パーティーだ。君は隅の方にいて、とても落ち込んでいるように見えた。私が歩み寄って、何か手伝うことはないかと尋ねた」

「ええ、あの時は本当に落ち込んでいたわ」

私は囁くように言った。

私は彼の目を見つめる。もう笑うことはできなかった。

なぜなら、それは私たちの本当の初対面ではなかったからだ。

藤原翔太郎。

あなたは忘れてしまった。私たちのかつての記憶を、あの、大切な記憶を。

一筋の涙が、知らずに目尻から滑り落ちた。藤原翔太郎が手を伸ばし、そのハンカチで拭ってくれる。

「何か、俺が解決できる問題でもあるのか?」

その言葉、その口調が、一瞬にして私を十年前のキャンパスへと引き戻した。

あの時の藤原翔太郎は、道に迷った一人の少女に、同じ言葉をかけてくれたのだ。

前のチャプター
次のチャプター