第7章

三ヶ月が過ぎ、東京に夏の気配が忍び寄っていた。

私は本条財団本社の全面ガラス張りの窓の前に立ち、眼下に広がる丸の内ビジネス街の喧騒を見下ろしていた。

身体はとうに全快していたが、心の空洞は未だに埋まらないままだ。

「社長、今四半期の投資報告書です」

秘書が恭しく、私の前のデスクに書類を置いた。

その肩書きは、私に一抹の満足感を与える。兄、本条誠が残した負の遺産の中で、私は一歩ずつ、自らの商業帝国を築き上げていた。この三ヶ月、私はほぼ全ての精力を本条財団の再建に注ぎ込み、兄が残した投資の失敗や問題のある提携関係の整理に着手していた。

夜、藤原家の屋敷に戻ると、執事から藤...

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