第14章

「謝れ」

 稲垣征也はもう一度、乱暴に新藤鈴奈の手首をつかみ、ぐいと手前へ引き寄せた。墨を流し込んだような黒い瞳が、彼女を逃がすまいと鋭く射抜く。

 手首にずきりと痛みが走る。

 けれど、それすら胸の痛みに比べれば、どうということもなかった。

 自分と津田真由のあいだで、この人が自分を選ぶことはない。

 最初から、ずっと。

 鈴奈はきゅっと眉を寄せ、唇を噛みしめたまま言い返した。

「私、何も悪いことしてない。だから謝らない」

 稲垣征也の表情は冷えきっていた。黒い瞳には凍てつくような霜が降りている。

「真由だって何も悪くない。なのに、どうしてあいつに突っかかる」

 容赦の...

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