第21章

稲垣日織は、もう長いことパパとママの顔を見ていなかった。電話をかけたいと何度も思ったのに、そのたびにおばあさまに止められてしまう。

幼稚園を出るころには、すっかりしょんぼりしていた。肩を落とし、元気の欠片もない。

「日織ちゃん、どうしてそんなに元気ないの? 誰かにいじめられた?」

やさしく微笑みを含んだ声が耳に届いた瞬間、稲垣日織はぱっと顔を上げた。

車のそばに立つ女を見て、それが津田真由だとわかった途端、ほんの一瞬だけ目に失望がよぎる。けれど次の瞬間には笑顔を浮かべ、小走りで駆け寄っていった。

「真由おばちゃん、どうして来たの?」

津田真由は手を伸ばして彼女の頭をそっと撫で、く...

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