第37章

稲垣征也は看護師に下がるよう言いつけると、ようやく病床のそばまで歩み寄り、ベッドの上の小さな娘を見下ろした。

珍しく厳しい顔つきだった。整った顔立ちは、しんと冷え切っている。

「転院の件は、お前が決めることじゃない。どうやら俺は、普段お前を甘やかしすぎていたらしいな。甘やかしたせいで、だんだん礼儀までなくなってきた」

父にきつく叱られ、稲垣日織は悔しそうにうつむいた。

「だって、先にあたしをいらないってしたのはママのほうだもん。全然会いに来てくれないのに、どうしてあたしが会いに行かなきゃいけないの?」

こんなに長く入院しているのに、一度だって顔を見せてくれなかった。

稲垣征也は小...

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