第50章

新藤鈴奈がエレベーターを降りたちょうどそのとき、稲垣征也は会議を終えたところだった。

廊下で、二人は不意に鉢合わせる。

新藤鈴奈の姿を見た瞬間、稲垣征也の目にかすかな喜色がよぎった。だが次の瞬間、何かを思い出したように、その表情はすっと冷え込む。

空気の変化を察した秘書が、慌てて間に入った。

「下で奥様にお会いしたものですから、そのままご案内しました」

稲垣征也は暗い目で秘書を一瞥し、不機嫌そうに言い捨てる。

「余計なことをするな」

そう言って、新藤鈴奈にはもう目もくれず、そのまま執務室へ向かった。

新藤鈴奈は、叱られた秘書へ小さく会釈する。

「ありがとうございます」

そ...

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