第6章

ぱしんっ――

頬に鋭い痛みが走って、ようやく稲垣征也は理解した。自分が今、新藤鈴奈に平手打ちされたのだと。

怒りに顔を歪め、勢いよく振り返る。

「お前、頭でもおかしくなったのか?」

新藤鈴奈は、じんじんと痛む手のひらを軽く振った。奥歯を噛みしめたまま、稲垣征也を真っすぐ睨みつける。

「ええ、狂ったのよ。だからもう二度と私にちょっかい出さないで。次に来たら、会うたびに殴るから」

津田真由に謝れ――

何をどう間違えたら、そんな話になるのか。

自分は何ひとつ悪いことなんてしていない。なのに、どうしてあの女に頭を下げなければならないのか。

稲垣征也は、目を沈ませたまま黙って彼女を見...

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