第60章

澄みきった彼女の瞳を前にしては、神園和臣は一言たりとも嘘をつけなかった。だから、あえて話題を変える。

彼は手を引っ込めると、彼女の背に当てられていた枕をさっと抜き取り、その肩をそっと押してベッドへ戻した。

「ほら。先生も言ってただろ、ちゃんと休まないと。変なこと考えなくていい。先に寝よう」

新藤鈴奈は、彼のぎこちなさに欠片も気づかない。神園和臣が「寝ろ」と言うなら、素直に横になるだけだ。

ぱちぱちと大きな目を瞬かせ、彼を見上げる。

「……もう行っちゃうの?」

瞳の奥の名残惜しさを汲み取り、神園和臣は掛け布団の端を整えながら、声音をやわらげた。

「行かない。ここで仕事片づけながら...

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