第8章

稲垣征也は、はっと息をのんだ。

初めて気づく。新藤鈴奈は意地を張っているんじゃない。――本気で離婚するつもりだ。

稲垣征也の信じられない顔とは対照的に、津田真由は好機を嗅ぎ取った。待ってましたとばかりに、取りなすように口を挟む。

「鈴奈、どうして離婚なんて言うの? 征也が手を出したのは悪かったけど、それだってあなたのためじゃない。男の人ひとりのことで離婚だなんて……征也をどこに置くつもり?」

含みのある言い回しに、鈴奈の瞳が冷え切る。

「黙って。あなたの出る幕じゃない」

離婚は夫婦の問題だ。いつから、他人が口を挟める話になった。

――それとも、稲垣の奥さんの座が欲しすぎて、顔も...

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