第12章 恐怖の夜

渡辺美咲は顔色を変え、一歩引いて男を警戒するように見据えた。

「……何する気? 私はもう手伝ったでしょ。そんなの、だめ」

その怯えを帯びた表情を見ても、ケビンの瞳に悪意はない。ただ淡々と説明するだけだった。

「君に危害は加えない。ただ、俺を追ってる連中は手が汚い。安全のために痕跡を残せないんだ。だから……君のスマホは、しばらく預からせてほしい」

渡辺美咲は拳をぎゅっと握りしめたまま、視線を彼の腕へ落とす。シャツに小さな穴。そこに滲む褐色の血。

「……怪我してる」

思わず漏れた声には、わずかな心配が混じっていた。

ケビンは傷口をちらりと見下ろし、気にしていないふうに肩をすくめる。...

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