第20章 渡辺美咲、お前は本当に度胸がある!

渡辺美咲は冷えきった顔のまま、くるりと背を向け、そのまま駐車場へ向かった。未練など、一片もない。

 田中康介はその場に立ち尽くし、遠ざかっていく背中を見つめた。胸の奥が重く、ひどく息苦しい。

 こんな渡辺美咲は、見たことがなかった。

 以前の彼女は、やわらかく従順で、きつい言葉ひとつ口にできないような女だった。

 それが今は、鋭い言葉を容赦なく投げつけてくる。しかも一つ一つが、彼のいちばん痛いところを正確に刺していた。

 田中康介は唇を開いた。呼び止めたかった。弁解したかった。引き留めたかった。

 だが喉元までせり上がったものは、結局どこにもぶつけようのない苛立ちだけだった。

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