第21章 あなたが彼を助けたの?

田中康介はスマホを握り潰すほど強く握り締めていた。怒りが理性を押し流しそうになる。

歯噛みしながら吐き捨てる。

「渡辺美咲……お前、いったいどこにいる」

だが電話の向こうに返事はない。聞こえてくるのは、ばたばたと乱れた足音、荒い息づかい――そして、男の低い怒声が二つ。

「手ぇ早くしろ。車に押し込め」

「起こすな。さっさと出るぞ」

「ボス、この女どうします」

今度は、田中康介にもはっきり聞き取れた。

そして、聞き取れた瞬間、その言葉が胸を強く打ちつけた。

――違う。

自分が勝手に想像していた、艶っぽい気配なんかじゃない。これは、危険の匂いだ。

田中康介の顔から血の気が引き...

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