第30章 ばれる

空き病室がひとつある。渡辺莉々のために、田中蘭がわざわざ用意した部屋だった。

もともとは、いつでも田中康介の世話ができるようにという名目で。

渡辺莉々はドアを押し開けると、ベッドの縁に腰を下ろした。目の奥に、ひやりとした冷たさがよぎる。

渡辺美咲がこの機に乗じて成り上がろうなんて、夢を見るのもいい加減にしてほしい。

自分が欲しいと思ったものを、渡辺莉々はこれまで一度だって手に入れ損ねたことがない。

その頃――渡辺美咲は病院の前に立ち、入るべきかどうか迷っていた。

見上げた先には、病院。胸の奥で、うまく言葉にできない感情がどろりと渦を巻く。

田中康介は自分の命を救ってくれた。なら...

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