第35章 食べ終わったら失せろ

「腹減った。飯、食わせて」

 意外なことに、田中康介の要求はそこまで無茶ではなかった。渡辺美咲はこっそり胸を撫で下ろす。

「いいよ。だから座って。もう動かないで。私がデリバリー頼むから」

 そう言ってスマホを取り出し、アプリを開く。

 だが次の瞬間、田中康介はあっさり首を横に振った。

「デリバリーは嫌だ。お前の作ったのが食いたい」

 その一言に、美咲は即座に却下した。

「無理」

 今日は病院で一日中働き詰めだった。手術を終えて、やっと帰ってきたばかりだ。今だって手がかすかに震えている。そんな状態で、康介のために台所に立つ気力なんて残っていない。

 だが拒まれた途端、康介はす...

ログインして続きを読む