第54章 誰を選ぶ?

「少し気分が悪くて……先にトイレへ行ってきます」

 渡辺美咲は一歩あとずさり、田中康介との距離を慌てて取った。

 まるで災いでも避けるみたいに、そのまま一目散に駆けていく。

 瞬く間に消えていったその背中を見送りながら、田中康介は胸の奥にじわりと苦いものが広がるのを感じた。

 美咲は、そこまで自分を避けているのか。

 それとも――そこまで自分のことが嫌なのか。

 彼の表情が、わずかに翳る。

 その様子を見た田中蘭は、身内のごたごたを人に面白半分で広められまいと、一歩前に出て田中康介の手首を軽く引いた。そして周囲へ向け、にこやかに笑う。

「うちの美咲は少し恥ずかしがり屋なんです...

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