第60章 酒の勢いに任せる

渡辺莉々は一瞬きょとんとして、目を丸くしたまま聞き返した。

「……どこへ?」

「地方の病院に異動になりました。今朝の便なので、もう飛行機に乗っている頃じゃないですかね」

看護師はそう言い、念のためといった調子で丁寧に付け足す。

「渡辺先生にご用件が?」

渡辺莉々はその場に固まった。顔の筋肉が引きつり、表情が凍りつく。

——異動?

渡辺美咲が?

そんなの、聞いてない。

「……いつの話? なんで私は知らないの?」

声が裏返りかけ、眉間にぎゅっと皺が寄る。

看護師は驚いて半歩退き、それから困惑したように首を傾げた。

「ここ数日の話ですよ。渡辺先生、二、三日前から手続きされて...

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