第9章 彼は熱を出した

田中康介は、受話口の向こうから返ってくるツーツーという忙音を聞きながら、怒りで全身を小刻みに震わせた。顔色はどす黒く沈み、今にも水が滴り落ちそうだ。

渡辺美咲が――電話を切った。ブロックまでして。挙げ句に離婚だと?

反抗もいいところだ。

「康介、どうしたの? 美咲、何かあったの?」

物音に気づいた渡辺莉々が、壁に手をつきながらこちらへ寄ってきた。顔いっぱいに心配の色を貼りつけている。

康介は大きく息を吸い込み、胸の奥で煮え立つものを無理やり押し込めた。

莉々へ視線を向けると、声だけは少し柔らげる。

「何でもない。あいつのことは放っておけ」

「え……でも、何があったの?」莉々は...

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