第116章

社員たちが驚いて息を呑む気配が、はっきりと耳に届いた。思わず一ノ瀬蓮のほうを、二度三度と見てしまう。

彼は自分が何か間違えたなんて微塵も思っていないらしく、あの妙に曖昧な距離感のまま、平然としていた。

「一ノ瀬蓮……」声が震える。反射的にトーンを落とした。「用があるなら、呼んでくれれば行く。私、会議中なんだけど」

視線で必死に今の状況を訴えても、彼は見えていないみたいに動じない。

「……」

そのとき、社員の一人がふいに立ち上がり、こちらに向かって言った。

「社長、相沢さん。それでは、私たちは先に失礼します」

胸の奥がひゅっと縮む。

――席を外す、ってこと?

今みんなが出てい...

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