第16章

それに気づいた瞬間、自分の目を疑った。――見間違いじゃないの?

けれど相手は、こちらが逃げるより早く、そっと私の手を包むように握ってきて。

「美月。君がここまで俺のことを考えてくれてたなんて、思ってもみなかった。安心して。子どものことは、俺が責任を取る」

掴まれた指先が、妙にあたたかい。反射的に振りほどきたくなる衝動を、必死で飲み込む。

私は笑った。作り物の笑顔で。

「信じてる。……ずっと待ってるから」

――こんな白々しい台詞、老夫人の前でしか言えないくせに。

「そうだ、祖母さん。誕生日の宴には、ひとり連れてくるよ。もう長いこと会ってないだろ?」

話題がさらりと流れて、結婚の...

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