第42章

千代がいつ部屋を出ていったのか、まるで気づかなかった。ふと我に返ったとき、目の前にいるのはその男だけだった。

 彼は私の正面まで歩み寄り、そのまま隣に腰を下ろす。

 何も言わない。なのに、存在感だけがいやというほど強い。

 「……」

 私は彼の目を見つめた。瞳の奥にわずかな狼狽を滲ませながら、何かを証明するみたいに口を開く。

 「ちゃんとご飯は食べました。だから……もう怒らないでくれますよね?」

 一ノ瀬蓮は眉を寄せ、訝しむように私を見た。

 「君には、さっきの俺が怒っているように見えたのか?」

 「違うんですか?」

 私は視線を伏せる。目が少し泳いだ。

 「だって今の私...

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