第54章

相沢美月視点

 私は神谷陸の腕を掴んだ。胸の奥に溜め込んでいた憎しみが、一気に全身へと流れ込んでくる。

 見れば分かる。こいつは私を警戒しているだけじゃない。焦ってる。怯えてる。

 今夜の「いいこと」を邪魔されたくない。だから必死で、私と一ノ瀬蓮をここから追い出したいのだ。

「おい、離せ。離せって言ってるだろ!」

 神谷陸は力任せに振りほどこうとしながら、声を落として吐き捨てた。

「今それどころじゃない。相沢美月……お前との落とし前は、ゆっくり付ける」

「ゆっくり? じゃあ今、きっちり付けようか。私に何をしたか――自分が一番分かってるでしょ」

 私は周囲に目を走らせた。白石萌...

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