第59章

言い終えるや否や、神谷陸の顔色がみるみる悪くなった。

私を見る目には露骨な不満が滲んでいる。けれど、私の隣にいる一ノ瀬蓮へちらりと視線を走らせた瞬間、その不満は喉の奥に押し込められた。怖気づいたのが丸わかりで、笑える。

私は鼻で笑い、もう一度振りほどこうとした。

――が、今度は違った。

神谷陸は一歩踏み込み、私の手首をがしっと掴んだ。力は強いのに、声だけはやけに柔らかい。

「美月、二人きりで話したい」

私は隣の一ノ瀬蓮をちらりと見る。数秒迷ってから、うなずき、握っていた手を離した。

蓮がわずかに目を見開く。訝しげな視線がこちらに刺さった気がしたが、私は気づかないふりをした。こん...

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