第9章

幸い、男はそれ以上こちらへ詰め寄ってはこなかった。

室内をひと通り見回してから口を開く。

「今日からここがお前の家だ。腹の子が大きくなって、親子鑑定ができるようになるまで――大人しくしてろ」

「私のお腹の子は本当に一ノ瀬蓮の子よ。あんたが私に何かしたら、絶対一ノ瀬蓮に言いつけて、ただじゃ済まさないから」

生き残るための本能みたいなものだ。とにかく“私には後ろ盾がある”と見せつけて、相手に手を出させない。それしか頭になかった。

こいつは一ノ瀬家の人間。初対面でいきなり殺す勢いで追跡してきたところを見ると、分家か、せいぜい傍流の誰かだろう。

分家の連中は、どれだけ強がっても結局は一ノ...

ログインして続きを読む