第10章

一週間後。私は研究に対する不安とはまったく質の違う、胸が躍るような高揚感に包まれながら、鏡の前に立っていた。神谷瑛斗との、初めての本当のデート。その違いが、私にとってのすべてだった。

時間きっかりに現れた瑛斗は、その手に大きな花束を抱えていた。彼の笑顔も、以前とはどこか違う。より柔らかく、自信に満ちていた。

「僕の奥さんを、改めてデートにお誘いします」

彼はそう言って、美しい花束を差し出した。

そのかしこまった言い方におかしくなって、思わず笑みがこぼれる。

「普通は、結婚する前にデートするものじゃない?」

「僕たちは、特別なんだよ」

瑛斗はにやりと笑って、私のために腕...

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