第9章

神谷瑛斗が追加の証言時間を求めたのを、私は呆然と見つめていた。青川理工大学の委員会が再開され、彼が部屋の前に立つと、心臓が激しく鼓動を打つ。

「私たちの関係について、補足説明をさせてください」

彼の声は落ち着いていたが、その思考は叫んでいた。

『――もう終わりだ……もう隠さない……全部話すんだ……』

『全部……話すつもりなんだ』

「黒崎教授の指摘は、部分的には正しい」

瑛斗がそう切り出し、私は胸の奥から不安がこみ上げてくるのを感じた。

「この結婚は、確かにある取り決めから始まったものです」

部屋は、しんと静まり返った。この先どうなるのか恐ろしくて、私は椅子の縁を強...

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