第8章

法廷から警察官に連れ出されていく雅人の絶望に打ちひしがれた後ろ姿を見送りながら、私は、本当のショーはこれから始まるのだと確信していた。

三日後、新東京で審理が再開された。義務付けられた精神鑑定を終えて法廷に戻ってきた雅人は、すっかり別人になり果てていた。かつての自信に満ちた外科医の面影は消え失せ、そこにいたのは虚ろな目と無精髭を生やした男だった。

「これより、最終判決を言い渡す」

裁判官が木槌を打ち鳴らすと、法廷は再び静寂に包まれた。

私は固く拳を握りしめた。この瞬間を、あまりにも長く待ち望んでいたのだ。

「田中杏奈、殺人罪で有罪。看護師免許を剥奪の上、懲役三年に処す」...

ログインして続きを読む