第1章

今朝から下腹部の鈍い痛みが止まない。ほんの四十八時間前に失ったものを思い出させる、疼くような痛みだ。けれど、私は今、美術館の前で黒のテスラから降り立とうとしていた。まっすぐに立つことさえままならないというのに、エメラルド色のヴァレンティノのドレスは完璧なラインを描いて揺れている。

『笑って、小夜。これも試練のうちよ』

鳴瀬財団が主催する年次慈善パーティーは、この季節一番の社交イベントだ。Y市の名士五百人が集い、一般人の家よりも高価な美術品を競り落とす。祐真の妻として、このガラには四度出席したけれど、今夜は違う。今夜、私は「演じて」いるのだ。

「鳴瀬さん、本当に輝いていらっしゃるわ」と、美術館の理事の一人である吉田彩香が甲高い声で言った。その瞳には、最近よく向けられる、憐れみと好奇心が混じった特有の色が浮かんでいた。

「ありがとう」

骨の髄まで蝕む疲労感にもかかわらず、私はどうにか安定した声でそう答えた。祐真はすでに数歩先を歩き、その意識は完全に隣の女に向けられていた。

桐生美加は、まるでファッション誌の表紙から抜け出してきたかのようだった。深夜の空を思わせるディオールのドレスは、彼女の身体つきの変化――噂では妊娠三ヶ月らしいが、私は聞かないふりをしていた――を隠しきれなくなり始めた、その曲線を際立たせている。艶やかな黒髪は優雅なシニヨンにまとめられ、その立ち居振る舞いには、自分がこの場所に属する人間だと確信している者だけが持つ、特有の自信が満ちていた。

ここが自分の居場所だと知っている者の。

「祐真さん、本当に気が利くのね」

喧騒の中でも、桐生美加の声ははっきりと耳に届いた。

「ミネラルウォーターを用意してくださってありがとう。妊娠中は水分補給が大事だって、よくご存じですもの」

夫の表情が和らぐのを見た。ここ数ヶ月、私には決して向けられることのなかった優しい顔だった。彼はこの上なく丁寧に彼女の肩のショールを直し、その指は必要以上に長くそこにとどまった。

『任務に集中なさい。150億円よ。私たちの未来がかかっているの』

「小夜さん」

いつの間にか隣に鳴瀬幸子が立っていた。完璧に結い上げられた銀髪。ガラスさえ切り裂きそうな鋭い笑み。

「今夜はずいぶん顔色が悪いわね。お家で休んでいらした方がよかったんじゃないかしら?」

「問題ありませんわ、幸子様」

そう答えたものの、まるでタイミングを合わせたかのように下腹部の痛みが強まる。

「そうでしょうね」

彼女の視線が、桐生美加が耳元で何かを囁き、祐真が笑っている方へと流れた。

「ちょうど今、高藤夫妻にも話していたところなのよ。祐真さんがあんなに……生き生きしているのを見るのは、実に清々しいわって。桐生美加さんには、彼の良いところを自然に引き出す才能があるのね」

その言葉は平手打ちのように胸を打ったが、私は無表情を保った。周りでは、聞き慣れた噂話のざわめきが大きくなっていくのが聞こえた。

「今夜ずっと、彼が彼女を無視してるの見た?」

「大事な人に紹介し忘れるなんて、これで二度目よ」

「可哀想に。昔はあんなに自信に満ち溢れていたのに……」

私は断りを入れてその場を離れ、サイレントオークションのテーブルへと向かった。どうしても手持ち無沙汰を紛らわせる何かが必要だった。現代アートのページをめくりながら、手にしたカタログがずしりと重く感じられた。けれど、どんな色彩も形も、霞のかかった意識の中には届かない。

「小夜!」

C大の同級生だった松村加奈子が隣に現れた。

「久しぶりじゃない。最近どう?」

私が答える前に、彼女の視線は祐真と桐生美加の方へと移った。二人は今、展示の近くに立っている。祐真は桐生美加の腰に庇うように手を置き、彼女はまるで……これがいつから続いていたのかは知らないが、まるで長年連れ添ったかのように彼に寄りかかっていた。

加奈子の笑顔が曇った。

「ああ……そういうこと」

その夜は、まるで心理的拷問の演習のように続いた。ディナーでは、私は祐真から三つ離れた席に座らされ、桐生美加が彼の右手にある主賓席を占めていた。妊娠のせいで吐き気がしてナイフを扱えないと彼女が言うと、祐真が彼女の肉を切り分けるのを私は見ていた。背中が痛むと彼女が口にすると、彼がクッションを取りに行くのを見ていた。彼が私に――私がそうだった頃に見せてくれた、あの優しい気遣いで彼女をもてなすのを、私はただ見ていた。

『そのことは考えるな。終わったことだ。終わらせなければならなかった』

デザートが運ばれてくると、司会者が注目を促した。

「皆様、鳴瀬家の並外れたご厚意に、この場を借りて感謝申し上げます。祐真様、一言お願いできますでしょうか?」

夫は優雅に立ち上がり、桐生美加の椅子の後ろを通る際、彼女の肩に軽く手を触れた。彼は私の方を一瞥だにしなかった。

「今夜は皆様、お集まりいただきありがとうございます」

祐真の声がボールルームに朗々と響き渡った。

「鳴瀬財団は常に、芸術と、それを可能にする素晴らしい女性たちを支援してまいりました」

彼の視線が桐生美加を捉え、その瞬間、部屋の他のすべてが消え去ったかのように見えた。

「人生には、本当に大切なものが何かを思い出させてくれる人が現れるものです。何のために戦う価値があるのか。何に……すべてを捧げる価値があるのかを」

拍手は雷鳴のようだったが、私の耳に聞こえたのは、自分の血が逆流する音だけだった。桐生美加は輝いており、その手はまだ小さいお腹を庇うように置かれていた。

その後の時間は、ほとんど無意識のまま乗り切った。頷き、微笑み、自分の人生からゆっくりと消されつつあることなど微塵も感じさせない、献身的な妻の役を演じきった。コートクロークの近くでようやく祐真が近づいてきたときには、どうやって言葉を紡げばいいのかさえ思い出せなかった。

「帰るか?」

彼は、まるで私がほとんど知らない同僚であるかのように、丁寧だがよそよそしい口調で尋ねた。

「ええ」

帰り道は、スピーカーから流れるジャズ以外、沈黙に包まれていた。祐真は窓の外を見つめ、おそらく桐生美加にメールでもしているのだろう。私は冷たいガラスに顔を押し付け、三日前にクリニックへ運ばれた時、この車がどれほど違って感じられたかを考えないようにした。何もかもが、どれほど違って感じられたかを。

ペントハウスに戻ると、私はゲスト用のバスルームに鍵をかけ、そしてようやく、ようやく仮面を外した。鏡に映った私は幽霊のようだった――青白く、目は落ちくぼみ、憔悴しきっていた。丁寧につけた化粧も、骨の髄から滲み出るような疲労と悲しみを隠すことはできなかった。

「これはただの試練よ」

私は鏡の中の自分に囁いたが、その言葉は口にするたびに小さくか細くなっていく。

「祐真は私を愛している。彼は私と結婚した。彼が選んだのは私なの」

私はまだ平らなままの下腹部に手のひらを押し当て、ほんの数日前までそこにあったはずの重みを思い出した。とても小さく、まだ現実感もなかったけれど、私はあれほど必死にそれを望んでいた。そして、なぜそれが許されないのかを祐真が説明したとき、彼はあんなにも優しく、それでいて揺るぎない眼差しで私を見ていた。

『まだだ、小夜。試練の最中にはダメだ。わかるだろう』

わかっていた。私はいつもわかっていた。

下腹部の痛みが再び脈打つ。なされた選択と、なされなかった選択を思い出させるように。十二時間後には、私は目を覚まし、またこれを繰り返さなければならない。笑顔を浮かべ、役を演じ、私が虚しさだけを抱えている一方で、夫がまるで貴重なものを宿しているかのように別の女性を扱うのを見つめなければならない。

三ヶ月。すべてが変わってから、ちょうど三ヶ月が経っていた。

私は目を閉じ、あの夜のことを――私の人生で最後の、普通だった夜のことを思い出すことに身を任せた。

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