第10章

「彼女はこう言ったわ。『こんな面倒には関わっていられない』ですって」

私はドアの前で立ち止まった。

「お金が絡むと、愛って驚くほどあっさり消えるものなのね」

その夜、私は都心のホテルのスイートルームでニュースを見ていた。その話題はどこでも報じられていた。祐真の事業は破綻し、評判は地に落ち、彼の私生活は巧妙な詐欺だったと暴露された。

桐生美加は弁護士を通じて声明を発表し、自分は操られており、祐真が私に対して行っていた「心理的虐待」については何も知らなかったと主張していた。だが、メディアはそれを鵜呑みにはしていなかった。

私のもとには一日中、電話が鳴りやまなかった。仕事のオファ...

ログインして続きを読む