第5章
手が震え始めた。今だ。今こそ、自分のために立ち上がり、この状況がどれほどおかしいか、二人にはっきり言ってやれる。残されたわずかな尊厳を胸に、ここを去ることができる瞬間。
しかし、150億円という金額。祐真の事業のトラブル。私たちの愛は何だって乗り越えられると証明するはずだった、あの試練。
これもその一部なのよ、と私は自分に言い聞かせた。震える指でワインボトルに手を伸ばしながら。これは、あなた自身が受け入れたことなのだと。
「もちろんですわ」
私はなんとかそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。桐生美加の椅子のところまでテーブルを回り込む間、ボトルが信じられないほど重く感じられた。...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
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